風、空、きみ

talk to myself

きみのもしもし #613

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「もしもしっ」と、きみが珍しく低い声で話しかけてくる。
 ぼくはちょっと手首に目をやり、そしてきみの目を見る。
「もしもし」
 今度は低い上にゆっくりと、そしてぼくの手首に視線を移す。
「わたしと一緒なのにどうしてそれが必要なの?」
 きみ曰く、
 急に雨が降ろうと、電車が止まろうと、一緒にいるのにそんな情報要らない。
 ましてやどこかの誰かさんからのメッセージで、
 ふたりの会話を邪魔されたくない。
「ふつうの腕時計でいいじゃん」
 さっきからいろんなメッセージを知らせてくれる
 このスマートウォッチがぼくらの時間を邪魔している。
 確かにね。
 きみと一緒にいるときは必要ないね。
 ぼくはきみに手首を差し出し、外してもらう。
 きみはにっこりと、
「でね、昨日ね」
 また新しい話を始めた。

Written by ken1

2019/09/15 @ 22:29

カテゴリー: kiss

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