風、空、きみ

talk to myself

Archive for 10月 2019

きみのもしもし #619

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 欲しいものは何?
「靴がいいな。素敵な靴がいい」
 素敵な靴は素敵なところに連れていってくれるから。
 と、きみが続ける。
 きみにとっての素敵なところはどこなんだろう?
「また来たくなるような、何回でも来たくなるような、
 そんな魔法をかけてくれるところ」
 うーん、どこだろう。
「大丈夫、素敵な靴が教えてくれるから」
「もしもし。うふふ」
 きみが微笑む。

Written by ken1

2019/10/27 at 21:47

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #618

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ーあなたは何になりたいの?
 この歳になっても、ぼくにとって答えられない問いかけをきみはしてくる。
ーどうして答えられないの?
 もうなれないと思っているから。
 恥かしいけど、それが正直な気持ち。
ーなりたいものになれるとかなれないとか。
 そうではないときみは言う。
ーもしもし、なりたいものになりたいって気持ち。
 きみはぼくを真正面から見つめる。
 見つめ返すのにとっても勇気が必要なことくらい、
 真正面からぼくを見つめる。
ーなりたいって気持ちを忘れないでいる事が大切なんだよ。
ーちょっとの事でいいんだよ。
ー大袈裟に捉えることはないんだよ。
 そんなきみに後押しされて、
 ぼくは一年ぶりに重い腰を上げることにした。

Written by ken1

2019/10/20 at 23:11

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #617

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 ゆっくりと、でも確実にぼくらは歳をとる。
 前向きに言葉を変えれば、歳を重ねると言うことか。
 物忘れも出てきて、身体のあちこちにガタが来る。
 今までのスピードで物事が処理できなくなって、
 自分自身でも焦ったくなる。困ったものだ。
 そんな話をきみにしていた。
 すると、きみはキョトンとしてぼくを見る。
ーもしもし。
 笑顔でぼくを見る。
ー歳をとることはそんな悪い事ばかりじゃないよ。
ーきっとそうじゃないよ。
ーいろんなものが見えてきて。
ーいろんなことに優しくなれて。
ーきっとそうだよ。
ー楽しみだなぁ。
 きみはおいしそうに珈琲に口をつける。

Written by ken1

2019/10/14 at 13:04

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #616

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「もしもし」
 始めにそう言ってから、きみはずっと話し続けている。
 途中で口を挟む隙もないほど、ずっと話し続けている。
 ぼくはとにかく、そんなきみから目を離さずに、
 そうだね。
 とだけ、時折り相槌を打つ。
 そしてたまに珈琲に口をつける。
 きっときみの珈琲もぬるくなっているだろうに、
 きみはそんなことにはお構いなしで、
 ずっと話し続けている。
 いくらでも、いつまでも、聞いていてあげよう。
 ぼくはまた相槌を打つ。

Written by ken1

2019/10/06 at 19:09

カテゴリー: kiss

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