風、空、きみ

talk to myself

Archive for 11月 2019

きみのもしもし #623

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 新しいMINIに乗り込み、ドアを閉める。その音。
 シートに座り、窓を開ける。
 遠くから子どもの笑い声と鳥のさえずりが聞こえる。
 少しだけその声に耳を傾け、そして
 エンジンに火を入れる。
 前のと同じエンジン音のはずなのに、その響きが心を揺さぶる。
 そしてきみからの電話の着信音。
ーもしもし、そーゆーのをね。
 きみの微笑みまでも音として聞こえてきそうだ。
ー幸せな音って言うんだよ。
 なるほどね。
 今日は幸せな音に包まれているようだ。
 ぼくはゆっくりアクセルを踏み込み、
 きみの待つお店へと向かう。

Written by ken1

2019/11/24 at 19:34

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #622

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 朝、散歩をする。
 旅に出ると朝のふつうの日課になるのに、家にいると週末でもまずやらない。
 田舎の実家に戻ると、最後の朝の儀式みたいな感じ。
 でも今朝、2階の自分の部屋から見える景色がぼくを朝の散歩に誘った。
ー町中が森林浴って感じだよ。
ーすごいね。
 車の音も聞こえない。
 人の行き来もない。
ーもしもし、森の中に迷い込んだ感じかな?
 おいおい、そこまで山奥じゃないよ。
 ぼくは思わず苦笑する。

Written by ken1

2019/11/17 at 12:58

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #621

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 きみが憂鬱な顔をしている。
 そんな顔のきみを見るのは初めてだ。
 どうしたのかな。何か気になる事があるのかな。
 きみは憂鬱な顔のまま、
 憂鬱そうな目つきでぼくを見上げる。
 こんなときはどうしたものか。
 ぼくはきみの憂鬱そうな視線から
 目を離さないようにして、
 そうだっ。
 試してみよう。
 ぼくはにっこり笑って、
ーもしもし。もしもーしっ。
 きみの専売特許できみにささやく。
 きみの憂鬱が晴れるように、
 何度でも何度でもきみにささやく。

Written by ken1

2019/11/10 at 23:25

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #620

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 きみと話していて、ずっと話していて、
 そこそこお酒も入っているものだから、
 でもぼくの方が飲んでいるものだから、
 会話の途中で、オチを忘れてしまう。
 それでもきみは笑って頷いてくれる。
「もしもし、それってこういうこと?」
 そうかも知れない。うん、きっとそうだ。
 そしてまた新しい会話が始まる。
 でも不思議だね、時計を見ているわけでもないのに、
 オチを忘れるくらいに酔っているのに、
 きみが帰れるギリギリの時間には気づいてしまう。
 うん、大丈夫。ぼくはぼくでちゃんと帰られから。
 今夜はこれ以上、寄り道はしないからさ。
 でも、それはそれできみは納得がいかないみたいだ。

Written by ken1

2019/11/04 at 00:39

カテゴリー: kiss

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