きみのもしもし #633
「ねぇ歌ってよ」と、きみが言う。
いいよ、と言って口ずさむ。
幼い頃、よく耳にした童謡、たまに不思議と思い出す。
まるで春のように暖かな今日、
思い出した童謡をゆっくり優しく口ずさむ。
ー春よ来い、早く来い。
「もしもし?」
一番を歌い終わったところで、きみが言う。
「昔一緒に歌った?」
目を細め、微笑みながらきみが言う。
そうかもね。
そんなことはないけれど、
まるで春のように暖かな今日、
何となくぼくまでそんな気になった。
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