風、空、きみ

talk to myself

Archive for 8月 2020

きみのもしもし #663

leave a comment »

ーいつまで着けとくのかな。
 きみが答えの出ない質問を投げかける。
 いいんだよ、周りに人がいなければ。
 いいんだよ、ぼくの前では。
 ふふふと、きみが笑って続ける。
ーこれでお化粧ごまかしてるの。
 もともとそんなにお化粧してないでしょうに。
ーうぅん、気持ちの問題なのよ。
 そういうものなんだ。
ーでもね、いつだってこれを外せる準備をしておくことにしたの。
 ぼくの前には美容サロンのチラシが置かれた。
ーもしもし、えらいでしょっ。
 そうだね、ものは考えようとはよく言ったものだね。

Written by ken1

2020/08/30 at 19:25

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #662

leave a comment »

ーもしもし、あのね。
 きみがうれしそうに話を続ける。
 電車でおばあさんに席を譲ったらしい。
 きみとしては普段の行動。当たり前のこと。
 すると、ありがとうって飴玉を渡された。
 驚いていると、おばあさんが笑っていた。
 それにつられて、きみも笑って受け取った。
 そんなきみの話。
 ぼくは一言、感想を述べる。
 そのおばあさん、人間のふりをした天使かも知れないね。
ーきっとそうだね、うん、そうだといいね。
 ぼくの天使はますますうれしそうな顔をする。

Written by ken1

2020/08/23 at 23:41

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #661

leave a comment »

 きみに恋しているのかな。
 きみを見ていてそう思う。
ーもしもし?
 きみがぼくの手をつつく。
 ぼくは首を横にふる。
 なんでもないよ。
 きみがまたぼくの手をつつく。
 ぼくは首を横にふる。
 にっこり笑って、横にふる。
 なんでもないよ。
 でも、うん、きみに恋しているのかな。

Written by ken1

2020/08/16 at 19:39

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #660

leave a comment »

 蝉時雨が聞こえない。
 いつもの夏は窓を開けるだけで、
 午前中からうるさいくらいに聞こえてくるのに。
 今年は蝉時雨が聞こえない。
 裏の神社に行っても、聞こえない。
 なんでだろう。
 幼い頃、蝉時雨のない夏はなかった。
 夏休み、寮から実家に戻っても、
 蝉時雨はふつうにある夏そのものだった。
 確かに実家の田舎とこことでは、蝉時雨の密度が違う。
 でも確かに身近に、夏の生活の音として聞こえていた。
 蝉時雨が聞こえない。
ーもしもし、来年は帰省しようね。
 きみも蝉時雨が恋しいみたいだ。

Written by ken1

2020/08/09 at 22:48

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #659

leave a comment »

 ここ数ヶ月でかなりの断捨離をしたと思う。
 でも部屋をぐるりと見てみると、まだまだここは物にあふれてる。
 どうしようかな、と思い悩む物がそこここにある。
 思い出は思い出として確かにあるんだけど、
 それに浸っていたら、何も変わらない。
 そんなことはもう十分に知っている。
 今はそれにも増して、
 残っているそれらは当時とても苦労して手に入れた気がしてくる。
「もしもし」
 きみがいつの間にか横にいた。
「いちど手放してもまた必要なものは手にはいるものです」
 きみはそう断言する。
 そうなんだろうけどさ。
 まだまだナタを振るえないぼくがいる。

Written by ken1

2020/08/02 at 23:19

カテゴリー: kiss

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。