Archive for 9月 2020
きみのもしもし #667
ーもしもし。
いきなりのもしもし。会話の途中からじゃない。
ーもしもし、思い出せる?
何をかな。
ーいろんなこと。
大丈夫、ぜんぶ思い出せるよ。
ー嘘つき。
でも、ぜんぶ思い出せるよ。
きみは少し考える。
ーじゃあ。
ぼくは少し身構える。
きみはふふふと笑う。
ーぜんぶ思い出してもらえるんだものね。
ぼくもふふふと笑う。
ー信じたげる。時がきたら昔話を楽しもうね。
ぼくは大きく頷いて、きみのおでこにキスをする。
きみのもしもし #666
ーねぇ、パリ行こうっ。
来年ね。
ー今日、行くの。
予約に行くのかな。でもまだ受け付けてないよ。
ー今日のね、夕方からパリに行くのよ。
そう言って、きみがURLとパスワードの書かれたメッセージを送ってきた。
ーオンラインでライブのパリツアーがあるの。
ライブか、朝はもう肌寒い季節になっているんだろうな。
ーもしもし、行くよっ。
そうだね、行こうっ。
きっとますます1日も早くまた行きたくなるんだろうな。
きみからのパリへのお誘い、とってもうれしくなったぼくがいた。
きみのもしもし #665
夏の終わりに体調を崩した。
毎年、夏バテからのほんの少しの体調不良は起こすけど、
今年の体調不良はなかなかのもの。
いまだに全快とは言い難い。
ー病院行ったぁ?
行ったよ。
ー来週の遠出の予定は大丈夫かなぁ。
大丈夫だよ。
ーもしもし、あなたはいつも大丈夫って言うのよ。
でも、毎回大丈夫だよね。
ーまぁね。
今回のきみが半信半疑なのがよく分かる。
ーマフィン焼こうかな。
きみなりの気遣い。
ほんと大丈夫だから。
きみのもしもし #664
そういう日もあるよ。
ぼくがきみに、そう伝えた。
いつもなら、きっと逆の立場なんだろうけど。
今日は、ぼくがきみにそう伝えた。
ーそうかな。
そうだよ。
毎日は違う日の繰り返し。
似てることの繰り返しに思えても、毎日は違う時間。
だから、
そういう日もあるよ。
そんな日も間違いなく明日につながっている。
そして明日には何らかの形で前に進む。
ーもしもし。明日を楽しみにしていいのかな。
もちろん。
きみの口元に少しだけ笑みが戻った。