Archive for 1月 2021
きみのもしもし #685
ーちちんぷいぷい、痛いの痛いの、飛んでけ。 きみが急に口ずさむ。 懐かしいおまじないを口ずさむ。 それって効くかな? ー何にでも効くはずよ。 きみが大きく胸を張る。 ー小さい頃、これを言われて治らなかったことなかったもん。 もしもし、だからね、ときみは空を見上げる。 ーちちんぷいぷい、みんな元気になぁれっ。 きみのおまじないが、世界中に届きますように。
きみのもしもし #684
ーだいじょうぶ。 きみが小さくガッツポーズをとる。 そう言えば、歌詞に大丈夫って言葉が入った歌は昔も今もたくさんある。 そして、みんなが耳にし、口ずさみ、勇気をもらったりする。 歌って必要なんだね。 ーもしもし、大丈夫だからね。 うん、わかった。 でも、歌っていいかな。 ーわたしのため? そう、きみに聞かせたい歌があるんだ。
きみのもしもし #683
ー笑うと幸せになれるって。 きみが真顔で言ってくる。 いろんな人が言ってるし、いろんなサイトでも目に留まる。 でも、きみから聞くと素直に「そうだよね」と思ってしまう。 ー朝、顔を洗ったらね、鏡に向かって笑うんだよ。 ーご飯を食べたらね、笑うんだよ。 そして一番大切なのは、ときみが続ける。 ーわたしを見たら、笑うんだよ。 もしもしときみが真顔でそう言ってくる。 うん、今まで以上にそうするよ。 きみはクスリと微笑んだ。
きみのもしもし #682
ーなにを見てるの? 空だよ。 淡い感じのブルーに、 ほんの少しだけ、気にならなければ気にならないほどの 本当に薄い白のフィルターをまとった空。 でも雲はひとつもなく、淡い感じのブルーの空。 つい見上げてしまう。 ーなにを見てるの? 鳥だよ。 そのブルーの空で気持ちよさそうに羽を広げて飛んでいる。 いち、に、さん、よん。四羽もいるね。 ーもしもし、わたしはね、あなたを見てるの。 もちろん、ぼくもきみを見ているよ。
きみのもしもし #681
ぼくが少年だった頃、 なんの不安もなく、近所の友だちと大声を出して裏山で遊んでいた。 大人になって、 多少の不安を抱えながら、 仲間と居心地の良いバーで顔を突き合わせ語り合っていた。 変わらなかったのは、 隣にいた彼らと肩を組み、顔を近づけ、間近で目を見て、 心通わせ、ふれあったこと。 デジタルの時代でとても便利になったけど、 横道に逸れることもなく、必要なときだけの繋がり。 楽しかったまったく関係のない会話、 そしてあの時のワクワク感もまだ湧いてこない。 ーもしもし。人間らしいって何だろうね。 きみまで簡単で難しい事を聞いてくる。