きみのもしもし #686
急に親父の声が聞きたくなり、車を走らせた。 フロントガラス越しに射し込む陽射しは柔らかく、 山下公園までの道は空いていた。 横浜港を正面に望むベンチもまだ混んでいなく、 散歩をする人もまばらだった。 ベンチに座り、親父が眠っている辺りの海面に目をやった。 ー何か言ってた? いや、何も。 ーもしもし。残念だった? いや、そんなことはないよ。 いつも黙って見守ってくれる人だったからさ。 近場の早朝ドライブに付き合わされたきみは、 公園の近くで買ってきてくれた珈琲をぼくに手渡した。
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