Archive for 4月 2021
きみのもしもし #697
もしもし、ときみが今日も聞いてきた。 今日のテーマは「天才」 縁がないなぁと思いながら、 きみの言葉に耳を傾ける。 「人が嫌がるかもしれないことや 人が疲れて続けられないことを 延々と続けられる人。 それが天才」 そんなことを口にする、 そんなきみこそ天才なんじゃないかと、 ぼくは思った。
きみのもしもし #696
ぼんやりと電車に乗った。 しばらくすると車窓から葉桜が見えた。 春が来てたんだ。 口元が緩むのを感じた。 「もしもし」 「ぼんやりっていいね」 「なんとなく幸せだね」 陽射しがきみを包んでいる。 ぼくは、そんなきみの手を離さないようにしようと思った。
きみのもしもし #695
またスニーカーを買ってしまった。 帰宅して靴箱を開けて、はたと困った。 このスニーカーを入れるスペースがない。 さてとどの靴を断捨離しようか。 一年間使わなかった真新しい靴を整理するか、 長年使い古した靴を整理するか。 それぞれに懐かしい思い出が蘇り、 靴箱に収まっている靴を前に、ぼくの動きは止まる。 「もしもし、これ何?」 包装紙に包まれたスニーカーを指差し、きみが笑っている。 「どこに収めるのかな」 ぼくは腕を組み、頭を振る。 「わたしのエリアまで侵食しないでね」 きみはいたずらっぽく笑ってる。
きみのもしもし #694
きみがゴロリとぼくの膝に頭を乗せる。 きみの首から肩にかけての体温がぼくの膝に伝わる。 生温かい。 その生温かさが、とても久しぶりに感じた。 きみの頭を撫でてみる。 なんだかいい香りがする。 そして、柔らかい。 これを幸せって言うのかな。 「もしもし」 きみがぼくを見上げる。