Archive for 6月 2021
きみのもしもし #706
「時間が足りない」ときみが言う。 やりたいことがたくさんあって、 そのひとつひとつを納得がいくまでやりたいようだ。 いろんなことに興味があって、 いろんなことが大好きなのは、 それはそれで素晴らしいことだと思うけど、 そのひとつひとつに必ずしも完璧を求める必要はないと思うよ。 「それじゃだめなの」 人それぞれの思いや考え方はあるんだろうけど、 気をつけないと息苦しくなっちゃうよ。 大好きなことを楽しんでやるくらいが丁度いいんじゃないかな。 「あなたはお気楽なのよ」ときみは首を横にふる。 でもね、きみが笑ってないときっとみんなも困っちゃうよ。 「もしもし。分かってるわよ」 うん。ならいいよ。 きみが早くそこから抜け出せますように。
きみのもしもし #705
「それでも地球は回っている」 きみと観ていた映画の主人公がヒロインにそう言った。 悲しいことがあろうと、楽しいことがあろうと、 それでも地球は回っている。 だったら、俺たちは前に向かって進もう。 主人公の言葉にヒロインは涙を堪え頷く。 ーもしもし。出来過ぎじゃない? だって映画だもん、とぼくは答える。 ーそうだけどさ。 こうやって天邪鬼なぼくらの夜は更けていく。
きみのもしもし #704
「好奇心は大切だよね」 きみがまた何かを始めようとしている。 続けていけば、必ず出来る。 よく耳にするセリフ。 でもきみのはどこかほんの少し違う気がする。 「たまにはハグしてね」 うん、いつものとは違うハグをしてあげる。 きみの好奇心とぼくのハグ。 今回きみは何をしようとしているのだろう。 「もしもし。ふふふ、お・た・の・し・み」 そうだね。楽しみにさせてもらうよ。 きみが毎日少しずつ、なりたいきみに近づけますように。
きみのもしもし #703
ーピアノがね、 小雨混じりの朝、きみがチャットを入れてくる。 ー上手く弾けないの。 この湿度と低気圧のせいではないかと、ふと思う。 でも、 上手く弾く必要はないんじゃないかな、とも思う。 きみにとって気持ちのいい音がひとつでも出せれば、 それでいいんじゃないのかな。 その音がきみを優しく包み込み、 その音が気持ちのいい別の音を連れてくる。 ーもしもし。その音はあなたにとっても気持ちのいい音になるのかな。 きっとそうだと思うよ。 きみにとって気持ちのいい音、 ぼくにとって気持ちのいい音。 きみのピアノが聴きたくなった。