Archive for 7月 2021
きみのもしもし #710
友が逝った。 ここ数年、連絡がなかった。 車を飛ばし、会いに行った。 30分ほど語らい、その場を去るとき、つい 「またな」と言いそうになった。 それほど、いつもと変わらない表情に見えた。 懐かしい思い出が、 いくつもいくつもいくつもいくつも いくつも思い出された。 もう酒を酌み交わすことはできない。 「もしもし」 うん、大丈夫だよ。 海のことが大好きだった友だちがね、海の日に逝ったんだ。
きみのもしもし #709
「いろんなことで数を数えるのね」 と、きみが不思議そうな顔をする。 歯を磨いた後の濯ぎの回数、猫の毛のブラッシングの回数。 そのほかにもいろんなことに数を数えていると教えてくれた。 いったいいつからなんだろう。 でもすぐに思いついた。きっとあの頃からなんだろう。 幼い頃、湯舟で100まで数えるように、母親から言われた。 そうでもさせないと、きっとカラスの行水だったのだろう。 そして、早口で毎晩100まで数えていた。 「もしもし。いい思い出の名残りだったんだね」 そうかも知れないね。 ぼくは少しだけ照れてしまう。
きみのもしもし #708
ー美しいって何?美しいことって何? なんだろうね。 ー何? いろんな美しさがあると思うけど、 でも、ほんとうに美しいことって 自分らしくいることじゃないかな。 ー?、もしもし、わたしはどう? それはきみ次第。 そして、力強く頷くきみをみて、 ぼくはうれしくなりました。
きみのもしもし #707
ドライブに行こう、ときみが誘う。 もちろん運転するのはぼく。 ぼくの思うドライブは目的地がとくにない。 とりあえず「あの辺」とだけイメージして、 適当に走って適当に戻ってくる。 きみの思うドライブは目的地がはっきりしている。 それも最近はパン屋さん。 最短ルートでパン屋さんを梯子する。 「もしもし。もう行くよ」 お目当てのパンを手に入れるため、 今日も早起きなふたり。 こんなドライブもいいかもね。そう思いながら、 ぼくはカーラジオをJ-WAVEに合わせる。