Archive for 10月 2021
きみのもしもし #724
きみの写真を撮る。 毎週1枚は撮っている。 きみとの記録、ではない。 きみとは、記録よりも記憶が大事だから。 きみの写真を撮る。 そのことできみが少しでも幸せを感じてくれればいいな。 少しでも笑顔が深まるといいな。 「もしもし。今の撮り直して」 いいよ。何回でも。 きみの写真を撮るとぼくまでなんだか幸せになる。
きみのもしもし #723
とっても久しぶりに友と話した。 離れているので、スマホ経由で顔を見た。 少し痩せたかな。 もともと痩せていたから変わらないか。 近況を共有するだけで、80分。 話題はまだまだ尽きない。 ーもしもし、どうだった?元気そう? きみも気になっているみたいだ。 元気だったよ。でも少し痩せてたかな。 ーそっか。次は会いに行けばいいじゃん。 うん、そのつもり。 きみはにっこり頷いた。
きみのもしもし #722
「今日が人生最後の夜だったら、会議とこの女性のどっちをとる?」 きみがぼくの前に座り、自分を指差しこう言った。 もちろん、この女性だよ。 間髪を入れずに、ぼくは答える。 「もしもし、少しは悩まないの?」 悩むとあとが怖い気もするし。 でも、そんなことは口にはしない。 「じゃあ、食事に連れてって」 よろこんで。 ジョブズが世に出したスマホの新しいのを設定中に、 きみはジョブズの言葉でそれを遮った。 きみの頭の良さには、お手上げだ。
きみのもしもし #721
「もしもし。見せないんだったら、撮らないのと同じだよ」 毎年応募していた写真展をすっかり忘れていた。 何をやってんだか。 去年は巷の影響で中止になったその写真展。 今年はちゃんとお知らせまで来てたのに。 「そんなときもあるよ」 きみにぽんっと肩を叩かれた。 ほんと何をやってんだか。
きみのもしもし #720
きみが腕組みをしている。 さっきからずっと目を瞑って腕組みをしている。 ぼくはその様子を珈琲片手にずっと見ている。 そろそろかな。 きみが大きく頷いた。 ーそうよね。 開いた目は生き生きとしている。 ー大切なのはやりたいことをやることよね。 ぼくはゆっくり珈琲を口にした。 ーもしもし、そうだと思わない? そうだね、ぼくも力強く頷いた。