Archive for 11月 2021
きみのもしもし #728
ー長居しすぎなのよ。 きみが呆れている。 ー懐かしいのは分かるけど。 きみがほとほと呆れている。 ここ1年半、ずっと行きたくて、でも行かなかった処。 ー楽しかったんでしょ。 ぼくは頷く。 馴染みのBarに4時間。 Barはさくっと過ごす処だよね。 きみが「しょうがないわねぇ」と笑ってる。 「もしもし」とぼくを突きながら笑ってる。
きみのもしもし #727
「種を蒔いてね」 うん。 「手をかけて育てるとね」 うん。 「やがて実りの日はやってくるのよ」 そうだね。 「もしもし、蒔くだけじゃだめなのよ」 うん。 「手をかけないとだめなのよ」 うんうんと頷くぼくに、 ほんと分かってるかなぁときみは腕を組む。
きみのもしもし #726
お皿洗おうか。 洗濯しとこうか。 きみはどれも首を横にふる。 にっこり笑って横にふる。 ーそれはわたしのお仕事だから。 じゃあ、と少し考える。 ーあなたはあなたのお仕事があるでしょう。 うぅん、ときみを見つめて考える。 ーもしもし。 少し間をあけてきみが続ける。 ーわたしのお仕事の邪魔をしないことも、 あなたのお仕事のひとつだね。 きみはふふふと笑っている。
きみのもしもし #725
久しぶりにアクセルを踏み込んだ。 それよれも何よりも久しぶりに首都高を走った。 久しぶりの首都高はいろんな環状線とつながり、 都内を出るまではずっとトンネルの中だった。 見えていたはずの家並みが頭上を飛んでいく。 地上に出てそのことをきみに言うと、 きみはあきれて笑っている。 「もしもし、いったい何年前の話をしているの?」 そして、きみは続ける。 「もっとアクセル踏み込みなよ。友だち待ってるよ」 そうだね。 ぼくらはこれから大切な友だちに会いにいくんだ。 フロントガラスからの陽射しがそんなぼくらを優しく包む。