Archive for 2月 2022
きみのもしもし #741
「子供に戻ればいいのに」 朝から腕を組んでああでもないこうでもないと悩んでいるぼくを見兼ねてか、 きみが独り言のように呟いた。 「何にでも興味を持って、後先を考えずに動いちゃう」 きみは素知らぬ顔を装い、コーヒーを口にする。 「子供の心を取り戻せたら最強なのにね」 そして、にっこりを笑みを浮かべる。 なかなかねぇ。 ぼくは苦笑いを返す。 「もしもし」 きみはまだ何か言いたげだ。
きみのもしもし #740
深夜にフランス映画をきみと観た。 久しぶりの休日だったので、ワインを片手にオンデマンドで。 小難しくなくサラリと観れそうなタイトルを選んだ。 「ねぇ、彼は今なんて言ったの?」 字幕の通りだよ。 「彼女はなんて返事したの?」 分かったって言ったんだよ。 「もっとたくさん何か言ってるよ」 でも、分かったって言ったんだよ。 きみがちょっと意地悪そうに笑っている。 「もしもし、何年レッスンに通ってるんですか」 ヒヤリングはね、苦手なんだ。 苦笑いのぼくはフランス産のワインを口にする。
きみのもしもし #739
きみからのプレゼントが机の上に置いてある。
いつの間にかに置いてある。
いつ置いたのだろう。
そっと蓋を開け、ひとつを頬張る。
美味しいな。
ーもしもし。むしゃむしゃ食べないでね。
そんな声が聞こえた気がした。
大丈夫、今年は心得ていますよ。
きみのもしもし #738
万歩計、活動量計。と口にすると、 「トラッカー?」 と、きみが聞き返す。 その方がスマートかな。 ぼくは以前からリストバンド型をよく使う。 「もしもし、数字に追われてない?」 確かに、よく寝れた、よく歩いたの確認によく使う。 歩数なんかはちょくちょく気になって確認する。 ずっと以前は自分の感覚だけだったのに、 今では世界中の見知らぬ人とも比較する。 どうなんだろうね。 するときみは、 「ご参考までに」 きみの今日の歩数をぼくに自慢する。