Archive for 3月 2022
きみのもしもし #745
ぼくはダンスが苦手だ。 リズム感なんてあったものじゃない。 テレビ番組のダンスを見よう見まねでやっても、 全く様にならない。 「もしもし、こっち向いて」 きみがぼくの背後から声をかけてきた。 何かな?と振り返るぼくにきみは続ける。 「それって、ターンって言うんだよ」 きみは笑っている。 「水たまりを避けるのは、ステップって言うのよ」 あなたもダンスはやっているのよと、 きみは笑っている。
きみのもしもし #744
ー鏡を見てね。鏡の中の自分に微笑んでみて。 そういうきみがぼくの前で微笑んでいる。 そしてその意味をぼくに伝える。 ー自分が自分に微笑むとね。 とっても嬉しそうにぼくに伝える。 ー人生も笑いかけてくれるんだって。 きみはポシェットからコンパクトミラーを取り出してぼくの方に向ける。 ーもしもし、どう? ぼくはきみが微笑んでいるだけで十分なんだけどね。 そんなぼくを見て、きみはふふふと微笑んでいる。
きみのもしもし #743
きみが歌を口ずさんでいる。 ー大丈夫だから、、、 と口ずさんでいる。 そして、 ー、、、きっと光はあるよ。 と優しく締めくくる。 昨日ラジオから聴こえてきた曲、 もう探してきたみたいだ。 ーもしもし。もう一度歌っていい? ぼくは何度でも歌ってよ、ときみに答える。 テレビでは理不尽な戦争が流れている。
きみのもしもし #742
「懐かしいね」 きみがスピーカーに目を向ける。 今日はなんだか、聴きたくなってさ。 「ありふれたこの魔法っていいね」 きみは聴こえてくる歌詞に微笑んでいる。 二人して珈琲片手に聴いていると、 「もしもし、次は優しい風が二人を包む曲、聴きたい」 きみも懐かしい曲が好きだね。 ぼくは曲をロビンソンからさわって・変わってに変えてみた。