風、空、きみ

talk to myself

Archive for 8月 2022

きみのもしもし #767

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 雨の中、久しぶりに車を使った。
 彼に渡すものがあった。
 どうしても今日じゃなければ、と思った。
 彼と知り合ってからの彼の写真。
 ぼくの手元に350枚はゆうに超えるストックがあった。
 それを1枚残さずフォトブックにした。
ーもしもし。驚かれたでしょ。
 うん、でもよろこばれた。
 受け取ってくれたお姉さんは、
 フォトブックを遺影の前に置いてくれた。
 フォトブックの1ページめの写真が遺影になっている。
 やっと彼との約束を果たせて気がした。

Written by ken1

2022/08/28 at 19:35

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #766

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 お盆前の茹だるような暑さが和らぎ、
 朝夕は肌に触れる空気も少しひんやりと感じるようになった。
ーもしもし、お散歩行こうっ。
 きみからチャットが入る。
 あの橋の畔で待ち合わせしようか。
 少し間をあけて、
ー数寄屋橋?
 と、きみからの返信。
 たまに思うのだけど、その博学はどこから来るのだろう。
 そしてぼくは近くの橋をきみに伝えた。

Written by ken1

2022/08/21 at 17:39

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #765

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-もしもし、今日は何してたの?
 水出しの玉露を嗜んできたんだ。
 大袈裟なものでもなく、
 正式な場とも言わないだろうけど。
 お茶を飲む、そうじゃなかった。
 小さなお猪口ほどの茶碗に
 ぽとりぽとりとゆっくりと落とされる。
 そして口の中で清いものが四方に広がり、
 全くの別世界に包まれる。
 慌ただしい昨今、こんな時間の使い方が
 きっと心にも体にも良いんだろうね。
 きみは静かに頷きながら聞いている。

Written by ken1

2022/08/14 at 20:02

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #764

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ーわたしってセンスないのよねぇ。
 ポロリときみが口にする。
 センスがない人なんていないよ、
 とぼくが言ってもきみは首を横にふる。
 経験がほんの少し足りないだけだと、
 少しでも好奇心があって、
 それを勉強したりしてると、
 センスって手に入ると思うよ。
ーもしもし、勇気づけてる?
 ぼくは笑って首を横にふる。
 好奇心が全てだと思うな。
 きみは少しだけ笑顔を見せる。

Written by ken1

2022/08/07 at 22:53

カテゴリー: kiss

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