Archive for 10月 2022
きみのもしもし #776
「もしもし、いいでしょっ」 きみが自慢げにぼくの前にそれを置いた。 朝日がきれいなブルーをテーブルに映し出す。 どこで見つけてきたのだろう。 角のとれた小さな青いガラス。 なんか懐かしく優しい感じ。 「あげる。玄関に置いといていいよ」 きみは原坊の鎌倉 On The Beachを口ずさむ。
きみのもしもし #775
「3時になったよ。おやつを食べよっ」
きみが無邪気に誘ってくる。
「珈琲?紅茶?、もしもし、どっち?」
とても良い習慣だと思う。
いつの間にかに忘れてしまっていた習慣。
きっと大切な習慣のはず。
ぼくらはこのひとときで他愛もない話をし、優しい気持ちに包まれる。
今日は紅茶にしようかな。
「あら?めずらしい」
きみはふふふと笑ってる。
きみのもしもし #774
一日一善。 ふと、思い出した。 大切なことだと思う。 ーもしもし。ふつうのことだよ。 例えば? きみは少し思い出すように、 ー今日は「ドアを開けて」「お先にどうぞ」かな。 ー意識しなくても、ね。 毎日の基本だよと、きみが笑っている。
きみのもしもし #773
きみがソファで丸まっている。 今夜は寒くなったから、ソファで寝ると良くないな。 ねぇ、そろそろこっちで寝ない? きみの肩に手をかける。 きみは小さく頷いて、両手を広げてぼくに差し出す。 ーもしもし、どこ。 きみは少し寝ぼけているのかな。 今夜はぼくの布団の中。 きみはこっくり頷いて、 差し出した両手をふんわりぼくの首に回す。
きみのもしもし #772
ー好奇心って何? 辞書を引いて出てくるような答をきみは求めていないはず。 きみから少し視線を外して、空を見上げる。 人生を楽しくするもの、それが好奇心。 我ながらいい答だと思った。 きみへの好奇心が、そしてぼくへの好奇心が、 今のぼくらの始まりだったと思う。 完璧な答だ、そう思った。 でも、きみはいたずらっぽく笑ってる。 ーもしもし。後半のは余分だったかもね。 ぼくはまた少し空を見上げる。