Archive for 3月 2023
きみのもしもし #797
桜を見に行こうと、きみをドライブに誘った。 春爛漫になってきたし。 途中、カーラジオからスローバラードが流れ始めた。 ねぇ駐車場でお昼寝したら同じ夢が見れるかな。 スローバラードの歌詞に合わせてきみに聞いてみた。 窓硝子からの陽射しに包まれているきみは、 ーいつでも同じ夢を見ているよ。 そして唇だけで「もっしもし」と笑った。
きみのもしもし #796
ぼくらは久しぶりに地図を開いた。 スマホじゃなくて、紙の本の世界地図。 その世界地図はぼくが行ったことのある国に色が付いている。 それなりに古くなった世界地図。 でもぼくにとって確かに意味のある世界地図。 ーもしもし、行ってみようよ。 ー行ってみるとね、きっと何かが始まるよ。 そうだね、きっとそうだね。 再開はやっぱりここからかな。 ぼくらは何度も訪れたいつもの都市のページを見ていた。
きみのもしもし #795
ー準備をしてね、それから ー努力もしてね、そうするとね ー幸運がどんどんどんどん 近づいてくるんだよ。 ーもしもしぃ、聞いてるぅ？ ぼくはそんな話をしているきみの真剣な眼差しに釘付けになる。 うん、もちろん聞いてるよ。
きみのもしもし #794
ー簡単じゃないかもね ーでも難しくはない 車のラジオから聴こえてくるナンバー、 きみが曲に合わせて口ずさむ。 そしてぼくの顔を覗き込む。 「もしもし」 ん？ 「いろいろあるから面白いんだよ」 あのことを言っているんだね。 きみはまた曲に合わせて口ずさむ。
風、空、きみ 