風、空、きみ

talk to myself

きみのもしもし #554

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「文字はね、きれいに書けるに越したことはないけどさ」
 ぼくの手帳を覗き込んで、きみがそう言う。
「読んでもらうって言う意識は大切よね」
 いや、これぼくの手帳だし、ぼく個人のね。
「うぅうん、日頃から意識してないといざと言うときに書けないわよ」
 きみはチッチッチッと人指し指を振る。
「でもきれいって言うより歳相応の字が書ける人に憧れるなぁ」
 歳相応って?とぼくが問うと、きみが今度は首を振る。
「大の大人がいつまでも丸っこい文字ってのもねぇ」
 読みやすいと思うけどなぁ。
「お仕事やポジションにもよると思うよ」
 そしてきみはこう言った。
「もしもーし。一緒にペン字でもやる?」
 もしかして、全てはきみ自身のことだったりして。
 でも、ぼくは素直に頷くことにした。

Written by ken1

2018/07/29 at 21:30

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きみのもしもし #553

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ー大好きな道はありますか。
 ずっと以前とっても以前、それは出会った頃のきみがぼくに尋ねた言葉。
 どこに行こう?
 そうきみに聞いて、しまったと思った。
 行き先も決めずにわたしを誘ったの?
 そんな言葉が返ってくると思った。
 でも、きみが口にしたのはそうではなく、
ーもしもし、あなたの大好きな道をドライブしてみたい。
 きみはぼくにそう言った。
 懐かしいな。
 クーラーを強めに点けても、窓からの陽射しがそれを打ち消す。
 指を折って数えることもできないくらい久しぶりにこの道を通り、
 今、きみに会いにいく。
 忘れかけていた思い出が蘇る。

Written by ken1

2018/07/22 at 15:23

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きみのもしもし #552

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 ねぇ写真撮るよ。と、ぼくが言う。
 するときみはあえて目を逸らす。
 ねぇこっちを向かない?
 きみは首を横に振る。
ー何で撮るの?
 いつまでもきみを忘れないために。
 いつでもきみと一緒にいた時間を思い出せるように。
 そんなことを言うと、きみはまた怒るんだろうなぁ。
ーもしもし?何で撮るの?
 その問いにぼくは答えず、ただ、ふふふと笑ってシャッターを切る。
ーあ、ずるい。
 ねぇもう一枚撮るよ。
 ぼくはファインダーをまた覗く。
 

Written by ken1

2018/07/15 at 22:55

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きみのもしもし #551

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ーもしもし、そうじゃないでしょ。
 きみが珍しく強い口調で切り出してくる。
 一緒にSNSを見ていた、その最中。
ーだってあなたの方がきっと身軽じゃない。
 一概には言えないかも知れないけどさ、と添えながら。
 ここ数年いろんなことがあって、いろんなことをやっちゃって、
 いろんなものを手放して、確かにぼくは以前に比べると身軽になった。
ーだから、あなたが動けばいいのよ。
 わたしに会いたくなったらあなたはわたしに会いに来る。
 それと同じじゃない、ときみは続ける。
 そうだね、確かにきみの言うとおり。
 彼が落ち着いたら、ぼくの方から声をかけよう。
 何かのついでではなく、あなたと話をしてみたいと、
 あなたとお酒を酌み交わしてみたいと。
 ぼくが不器用な分、ぎこちない会話から始まるんだろうけど、
 とにかくそうしよう。
ーうん、いいんじゃない、忘れないでね。
 きみの口調は優しくなった。

Written by ken1

2018/07/08 at 21:56

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きみのもしもし #550

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 再開しました。
「違うでしょ。また再開しました。でしょ」
 と、きみは半分あきれた顔で、でも笑っている。
「ちゃんと水を持っていくのよ」
 そして、心配してくれている。
「いつも何やかやと避けているあなたが、
 そうやって自分からまた始めようとするのは良いことね」
 避けてたっけ。
「今日は寒い。今日は雨。今日は暑い」
 これがあなたの口癖よ、ときみが笑う。
 大丈夫。途切れてもまたまた再開するからさ。
「もしもしぃ」
 きみは腕を組んで苦笑する。
「再開の連続、それも一つの継続かもね」
 熱中症に気をつけて、無理はしないように。
 ジョギングを再開したぼくに、きみは笑ってそう言った。

Written by ken1

2018/07/01 at 19:55

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きみのもしもし #549

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 天気予報を意にも介さない今朝の天気がやっと落ち着いてきた。
 いい陽射しだ。
ー全部の部屋の窓を全開にしていい?
 もちろん。
 きみはリビングと和室の窓を、
 ぼくは奥の二つの部屋の窓を。
 ついでだ、バスルームの窓とドアも開けよう。
 少し湿った風が通り抜けるかと思っていたけど、
 思いの外、清々しい風が部屋中を包んだ。
 うん?これなら。
 ぼくはリビングのエアコンをつけた。
 夏に向けての試運転。
 でも、少しするときみがシャツを一枚羽織る。
ーもしもしぃ、寒いっ。
 うーん、まだ少し気が早かったか。
 ぼくはエアコンをオフにして、
 きみに熱々の珈琲を淹れることにした。
 

Written by ken1

2018/06/24 at 19:46

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きみのもしもし #548

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 ミツバチさんやアゲハ蝶さんが見ている花の色と
 わたしたちが見ている花の色は違うのよ。
 週末のテレビ番組でそう言っていたと、きみが言う。
 それなりに科学的な理由で解説してたけど、
 わたしは違うと思うのね。
 わたしたちだって人を色眼鏡で見たり、先入観で決めつけたり、
 第一印象がずっと引きずったりするじゃない。
 きっと虫さんたちはずっとずっと以前に、とってもとっても昔に、
 花さんたちと何かあったのよ。
 だから今でも花さんたちをわたしたちとは違う色眼鏡で見てる。
ーねぇそう思わない?
 そう言ってきみは科学を覆す。
ーそうかもね。
 ぼくは少しだけ困ってしまう。
ーもしもし?わたしの言ってること変?
 そうじゃあないんだけど。
 きみの誕生日にサプライズで部屋を飾った色とりどりの花。
 さてこの後、きみはどんなリアクションをするんだろう。
 そっちの方がぼくは気になっている。

Written by ken1

2018/06/17 at 19:20

Posted in kiss

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