風、空、きみ

talk to myself

きみのもしもし #603

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ー今日は何の日か知ってた?
ーそう、七夕だよね。
ーでも特別な七夕なんだよ。
 きみがふふふと笑う。
ー違うよ、雨だから特別じゃないよ。
 きみが首を横に振る。
ー二人もちゃんと働いてるの。
ーきちんと働いてるから神様は二人を会わせてあげるの。
 そして、しばらくの沈黙。
ー今日は日曜日。
ー二人の仕事もお休みだから、大手を振って二人は会えるの。
 きみはまたふふふと笑う。
ーもしもし、6年ぶりの日曜日の七夕だよ。
 きみは遊ぼって笑ってる。

Written by ken1

2019/07/07 at 23:48

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #602

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 友だちではなかったのかも知れない。
 ふと思った。
 でも、
 とってもとっても、そう、とっても大切な人がいなくなった。
 彼とのやりとりで、これが最後のやりとりになるんだろうな。
 そう思った。
 そして今夜、彼はいなくなった。
 確かに友だちだったのかも知れない。
 でも、やはり大切な人だったんだ。
 いなくなって再確認できるなんて、何なんだろう。
「もしもし。飲もっ」
 きみが赤ワインを継ぎ足してくれた。

Written by ken1

2019/06/30 at 19:51

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #601

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 旅行の準備が進まない。
 進まないというより、手もつけていない。
「まだ日はあるじゃん」ときみが笑う。
「せっかちなんだから」と。
 でもこのところ忙しく、週中では手をつけられない。
 すると準備は週末になって、
 でも週末は友だちと約束があったり、
 気になる展示会もあったりする。
 そう数えると残すところ週末はもうないに等しい。
「もしもしぃ」
 きみが腕を組んでいる。
「あれこれ考えるより、今からやればぁ」
 だよね。
 そしてぼくは重い腰をあげる。

Written by ken1

2019/06/23 at 18:46

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #600

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 ぼくは忘れていないよ。
 何にもしないときみにいつも言われてるけど。
 例えば、レストランの予約、コンサートの誘い、
 確かにきみが全部やってくれる。
 でも、ぼくは忘れていないよ。
 去年の夏、ここのパフェをきみに誘われ、
(あぁ、確かにあのパフェもきみが見つけてきたんだ。)
 あの時ウィンドーに飾られていたチョコレートで出来た贈り物を見て
 きみが言った一言、ぼくは忘れていないよ。
ーもしもし、どうして今日は会えないの?
 うん、ちょっとね。
 あのチョコは予約が必要なんだ。
 今日予約をしないと二週間後のきみの誕生日に間に合わないんだ。
 そう、ちょっとね。
ーじゃあ、来週は会えるのかな。
 来週もそして再来週も会えるよ。
 きみは今日会えないことに納得がいかないみたいだ。
 ふふふ。
 たまにはサプライズをしないとね。その準備も必要なのさ。

Written by ken1

2019/06/16 at 21:51

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #599

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 幼い頃、すすきの穂で蛍を捕まえていたことを思い出した。
 夜、小川の淵ですすきの穂をゆっくり左右に振ると、
 たくさんの蛍が穂にくっついてきた。
 その蛍をそっと籠に移し枕元に置くと、
 柔らかい灯となって、ぼくと母親を包んでくれた。
 今夜の蛍放生祭を見にきて、そんな思い出が蘇った。
「ねぇあっちにもいる。あ、こっちにもいた」
 きみがそっと耳打ちするように、でも
 はしゃいでいるようにもとれる口調でぼくに教えてくれる。
「もしもし、どうしたの、ぼーっとしてる」
 ううん、ぼくは首を横に振る。
 きれいだなって思ってさ。
 そんなぼくらの前を柔らかい灯がひとつ、横切った。

Written by ken1

2019/06/09 at 22:16

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #598

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 遠くに行っているきみからたまに連絡が入る。
 昨日まで裏の境内のベンチで話をしていたはずなのに、
 少し間が空くと、もうどこかに飛んでいる。
 そして必ず、
ーもしもーし、あなたもおいでよ。
 そう言ってくる。
 いいなぁ、きみは鳥みたいで。
 行きたいのは山々なんだけど、
 ぼくはまだまだしがらみが多そうだ。
ーいつでも待ってるよ。
 きみは屈託のない笑顔をメッセージに乗せてくる。

Written by ken1

2019/06/02 at 19:40

カテゴリー: kiss

きみのもしもし #597

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ー心のフィルムに写す。
 著名な写真家が、今日そう言っていた。
 だからあの日はカメラを持って行かなかったのだと。
 あの日が彼にとってどんな日だったのか、
 うわべだけ想像することは出来ても、
 ぼくには本当に理解することは出来ないんだろうな、と思った。

「もしもし、ぼーっとしてないっ。今日はおニューの夏服だよ」
 きみがぼくの目の前でくるりと一回転する。
 瞬間、夏色のスカートはふわっと開き、
 ぼくだけのバレリーナがそこにいた。
 そっか。
 今日はカメラをカバンから出さずに、
 一秒でも長く、きみを見ていよう。

Written by ken1

2019/05/26 at 21:20

カテゴリー: kiss

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